かわいいかわいい、ぼくのペット。
実は、わたしは旬平くんをワンコみたいって思っている。 勿論、それはパシリだとかそういった蔑んだ意味じゃなくて。 ころころと変わる表情は、まるで尻尾がついてるみたいに可愛くて、 誰にでも優しいけれど、縄張りみたいなのもちゃんとあって、わたしには少しだけ、特別だってことも知ってる。 飼い主の言うことも何でも聞くわけじゃなくて、怒るときはちゃんと怒ってくれるし 可愛く甘えてくると思ったら、かっこよく守ってもくれる。 それは、りりしい気品を持った、主人を守る番犬みたいな。 「ねえ美奈子ちゃん、オレ今日アンタの服見に行きてえなー」 「え、こないだも見たよ?今日は旬平くんの見に行こうよ?」 「そうだっけ?」 「そうだよ、わたしの服選ぶの好きだね?」 「んー、だってアンタ可愛いんだもん。でもまあ、じゃあ今日はやめとくか」 「……いいよ、わたしも、選んでもらうの嬉しいし」 正直な話、オレは美奈子ちゃんを猫みたいな人だと思っている。 子猫チャン、的な意味でも、まあオッケーだけど、そういうんじゃなくて。 ナンパしたら逃げてったり、それなのにデート誘ってきたり、ぺたぺた触ってくるくせに、こっちが触ると慌ててる。 もしかしてオレのこと?って思わせる態度を取ったかと思うと、他の人にも優しくしてたり。 カワイイ顔してるくせに、どこかつかめなくて、でも、だからこそ?触りたくなる。 触るとふわふわあったかくて、ぎゅーってしたくなって、……まあ、それは猫とか関係ないけど。 とにかく可愛くて、でもどこかつれない、キレイな瞳のつやつやな猫。 「ねえねえ、こっち!こっちも着てみて!」 「……なんか、幸せそうだねえ旬平くん……」 「とか言って美奈子ちゃんもさっきのヤツ気に入ったっしょ?すっげえ可愛かったし!」 「わ、もう!声おっきいよ恥ずかしいってば!」 好きなことをしている旬平くんは、本当に耳としっぽが見えるみたい。 ぱたぱた揺れてるしっぽが見える。 それがわたしといて、わたしと遊ぶのが楽しいってことだと思うと、わたしもすごく嬉しくなる。 「あー、でもそろそろ違うとこ行く?さすがに飽きた?」 「え?別にいいよ、わたし、旬平くんが楽しそうにしてるの好きだから」 「……え、そうなの?」 「……あ、えっと、っていうか、あー、うん」 あ、はぐらかした。アンタ、耳めちゃめちゃ赤いぜ? 何言っちゃったんだろうわたしー、みたいな顔してるくせに、なんでもなかったみたいに試着室から出てくる。 ホント、ふわふわ、つかめないアンタ。スゲエ可愛い。 「……もう、なんで笑うの……」 「え?オレ笑ってた?」 「すっごい笑ってました!もーやめてよ恥ずかしくなるから!」 「恥ずかしいこと言っちゃったくせにそういうこと言うー?」 「きゃー!もうなんなの旬平くんのばかぁ!!」 「な、とりあえず、メシ食いに行かね?」 ニコニコ笑って旬平くんが聞く。もうホント、尻尾振りすぎだよ。 「もう……いいよ。またパスタでしょ?」 わざわざつっけんどんな言い方してる。けど美奈子ちゃん、喉グルグル鳴ってんの、知ってるよ? わたしにとってあなたは、可愛い犬。 尻尾振られて見上げられたら、もうなんにも、逆らうことなんて出来ない。 オレにとってアンタは、可愛い猫。 恥ずかしがり屋のアンタに、たくさん擦り寄ってあげるから。 ――もしかして、飼われてるのは……? END ――――――― なんっじゃそりゃー!!(ちゃぶ台をひっくり返す星ひゅうま父)(※イメージ映像) なんか……すごいイチャラブさせたいって思ったら、こんな……ことに……(呆然としながら) 実際、ペットに飼い主のほうがベタぼれで、振り回されまくりなのはよくある話ですよね。 二人して、自分が愛でてる気になってて、でも実際は。みたいな。 ペット、という響きがすでにえろいと思いますが全然そういうのじゃなくてすみません。 2011.06.18 →目次へ戻る →TOPへ戻る |